【保存版】2016年度 Ph陽性急性リンパ性白血病の最新治療まとめ

この記事は:約8分で読めます。

ひろまさ(@hiromasa79)です。
最近になって、

  • 「PH+ALL」っていう病気をきちんと理解しておきたい
  • 最新の治療法や薬はどんなものがあるのか・研究されてるのか?

という思いが強くなっていたので、自身で調べた内容を整理する意味でまとめてみました。

フィラデルフィア染色体陽性成人急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)

とても長い病名ですが、単語で区切ると意味がよく理解できるようになります。

自分の病名をを正しく理解するために

Ph+とは・・・フィラデルフィア染色体という異常染色体を有している状態を言います。慢性骨髄性白血病(CML)もPh+となるため、治療薬が共通の場合が多いです。ちなみに、この染色体異常がない場合は、Ph-となります。

成人とは・・・急性リンパ性白血病患者の約80%が小児(15歳未満)であり、治療プロトコルや治療成績が大きく異なるため区別が必要です。成人20%の内訳でも50歳以上の比率が高く、15~49歳の患者数は圧倒的に少なくなる傾向にあります。

急性とは・・・慢性期/急性期があり、急性期では白血病細胞の増加スピードが著しく、放置すると数週間~数ヶ月で死に至ることがあります。

リンパ芽球性とは・・・がん化した細胞の種類によって骨髄性/リンパ性に分けられます。この場合、未熟なリンパ球(芽球)ががん化・増殖している状態とわかります。

白血病とは・・・「血液のがん」を言います。遺伝子変異を起こした造血細胞(白血病細胞)が、骨髄内で増殖して正常な造血を阻害し、血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患の事です。

このように、1つ1つの単語に分けて考えることで、病気の概要を理解することができたと思います。

最新の治療を求めて

ここからは、今現場でどんな治療が行われているのかを追いかけていきます。

Ph+ALL治療の変遷

  • インターフェロン療法(1970年代~)
  • 分子標的薬(2001年~)
  • 進化した免疫療法へ(2015年~)

「化学療法」と呼ばれる、抗がん剤を組み合わせて投与する治療法が標準治療の第一選択肢です。この療法で完解導入を目指し・その後の完解維持を目指すのが模範的と考えられます。

しかし、Ph+など染色体異常を有するケースでは再発率が非常に高いため、「化学療法」と「分子標的薬/免疫療法」の併用治療を行い寛解させたあとも、「生体幹細胞移植(骨髄移植)」を行うのが、長期生存率としては一番可能性が高い治療となります。

白血病の治療はこの数十年で大きく進歩し、「不治・難治」→「治すことが出来る」病気になったと言われています。ターニングポイントは、分子標的薬:イマチニブ(商品名グリベック)の登場です。これを機に、服薬で白血病細胞をコントロールし完解維持出来るようになったここが非常に大きい変化をもたらしました。(実際、イマチニブ登場以前は、Ph+ALLは「予後絶対不良」と言われていたそうです・・・。)

先日の記事で書いた、ポナチニブ(商品名アイクルシグ)は、この流れを汲む最新の分子標的薬の事です。

ポナチニブ(Ponatinib)の国内承認日は2016年11月?薬価収載は2017年2月末??

2016.03.26

ポナチニブはフィラデルフィア染色体陽性で、再発時にT315i変異による薬剤耐性を持った自分にとって最後の希望

2016.03.12
さらに、2015年には「免疫チェックポイント阻害薬」が注目を浴び始めています。ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、固形がんのいくつかで実用化されている分子標的治療薬の一つです。日本においては2014年7月4日製造販売が承認され、2014年9月小野薬品工業から発売が開始されています。

この薬の凄いところは、免疫のシステムに作用してがん細胞への攻撃力を最大限に引き出すことが出来る点で、白血病治療にも効果が期待できることが報告されています。

 治療法の選択権はあなたにある

もし、あなたがPh+ALLと診断され治療を始めることになった場合、どんな治療を受けることになるのか?これは治療を行う病院によって異なるので、先ずはどんな治療があるのかを自分が知っておく方が主治医の話を理解しやすくなります。

また、セカンドオピニオンを受けて自分の納得できる治療が受けられる病院・先生のところに転院した、という患者さんも少ないと聞きます。多少遠くても、自分の住んでいる地域を離れてしまうデメリットより、安心して治療を受けられるメリットの方がはるかに大きいことから、ご自身で納得できるまでしっかり検討した方が良いでしょう。

入院治療の期間は大体の場合6ヶ月以上に及びます。退院出来たとしてもずっと病気付き合っていくことになるし、何よりPh+の場合は、「生体幹細胞移植」も見据えての治療計画となりますので、このあたりの症例数も病院選びの参考にしたいところです。あとは、何より主治医を信用できるかどうかです。納得がいくまで質問をぶつけてください。それに答えられない医師は、やはり今後の治療を任せる上でも信頼できなくなってしまうからです。

それでは、実際の治療について見ていきます。

治療プロトコール

治療の手順(手引書みたいなの)のことです。Ph+の場合は、「化学療法」と「分子標的薬」の組み合わせて治療していきます。抗がん剤を投与するスケジュール・薬の容量・用法などについて、手順を標準化するためにいくつかのプロトコールが存在しており、各地の病院で治験が行われています。

代表的なプロトコール

JALSG Ph+ALL213

日本成人白血病治療共同研究グループが主体となってまとめたプロトコールで、現在多くの病院で臨床治験を行っています。

JALSG・・・日本成人白血病治療共同研究グループ(1987年設立)。国内173施設が参加しており、国内最大。国際的にも活躍している白血病臨床研究グループ。白血病と名のつく疾患とその近縁の病気、骨髄異型性症候群と多発性骨髄腫に対する臨床研究が行われている。

Ph+ALL/MRD2014

福岡血液骨髄移植グループ(FBMTG)が主体となって行っている治験で、僕が受けていた治療プロトコールです。赤十字病院の主治医からは、Ph+ALLの標準治療として確立するために治験データを採っていると聞いていました。僕は再発後に転院、ハプロ移植、再再発、臍帯血移植、のイレギュラーなことが多く、この間のどこかで治験からは外れてしまったのが本当に悔やまれます。

MRD2014は欧米で開発研究された治療プロトコールで、こちらを採用する病院とJALSG(日本謹製)プロトコールを採用する病院の2つに大きく分かれるようです。

抗がん剤

化学療法は抗がん剤を用いてがん細胞の分裂を抑え、がん細胞を破壊する治療法のことを言います。抗がん剤は静脈に注射することで血液中に入り、全身の隅々まで運ばれて体内に潜むがん細胞を攻撃・破壊してしまいます。全身のどこにがん細胞があってもそれを全滅させる力を持っているので、全身的な治療に高い効果が見込めます。

ただし、正常な細胞もまとめて攻撃・破壊してしまうことと、様々な副作用があるため入院治療によるフォローアップが必ず必要になります。
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分子標的薬

分子標的薬・・・がん細胞特有・あるいは過剰に発現している特定の標的(分子)だけを狙ってその機能を抑える薬を言います。最近では、抗体と細胞毒性物質だけでなく放射性同位元素を結合させた融合抗体(抱合薬)も開発されていて、今後の発展が期待されています。

Ph+の場合、この染色体異常だけを狙って退治することができるため、最新の治療では欠かすことのできないものとなっています。ただし、一度消滅したはずの異常な遺伝子も再び現れる(再発)すると、薬が効かなく(耐性を持ってしまう)なることがあり、新たな薬の開発とのイタチごっこのような状況が現在も続いています。

分子標的治療薬には以下の2つがあります。

低分子医薬品・・・チロシンキナーゼ阻害薬(~nib)

  • イマチニブ(商品名:グリベック)
  • ダサチニブ(商品名:スプリセル)
  • ポナチニブ(商品名:アイクルシグ)
  • アキシチニブ(商品名:インライタ)

 

抗体医薬品・・・モノクローナル抗体(~mab)

 

  • リツキシマブ(商品名:リツキサン)
  • ブリナツモマブ(商品名:ブリンシトー)

 

 

インターフェロン療法(サイトカイン療法)

インターフェロン・・・体内で病原体(特にウイルス)や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のことを言います。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種です。

インターフェロンは、リンパ球などの免疫細胞を活性化させます。この作用によってリンパ球ががん細胞を破壊すると同時に、インターフェロン自体もがん細胞を直接破壊し、がんに対して効果を発揮することが研究で分かっています。しかし、治療効果は全体の10-20%程度であることと、正確な作用機序(どういう仕組みで効果があるのか?)やその効果が永続的であるかどうか現在のところ未だ解明されていません。

ざっくり説明すると、ヒトが本来持っている「免疫システム全体」を活性化させることで、がん細胞もやっつけてしまおうというのがインターフェロンを用いた免疫療法だと言えます。ただし、副作用が強く出てしまうことがあるのがよくあるとのことで、使用には医師も消極的なのが現状です。

最新の治療研究

ここからは僕が独自に調べた治験や研究の中から、主治医に質問を重ねて整理した信用できるものだけを取り上げて紹介していきます。

ABL001 アロステリック阻害薬

慢性骨髄性白血(CML)治療のために開発された薬ですが、実際の治験にはPh+ALL患者の方も参加しており、有効性の報告が期待されています。アメリカでも未承認・治験段階の治療となります。

白血病幹細胞を対象疾患としたチロシンキナーゼ阻害薬

白血病細胞の増殖を抑えるチロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブなど)とは違い、白血病幹細胞を死滅させる根治療法を目的とした薬です。広島大学とカルナバイオサイエンスが共同研究中です。

CAR T細胞療法

あとがき

最後までお読みいただきありがとうございました。いかかだったでしょうか?

かなりカタい表現になってしまたのは反省しています。ですが、記事を書くために何度も何度も調べなおし書き直した一連の作業は、個人的にはとてもいい経験になりました。

最後に今回紹介した中から、個人的に今後の展開に期待している最新の薬や治療法をあげて、終わりにしたいと思います。

 

  • ポナチニブ(アイクルシグ)
  • アキシチニブ(インライタ)
  • ブリナツモマブ(ブリンシトー)
  • アロステリック阻害薬(ABL001)
  • 白血病幹細胞を対象疾患としたチロシンキナーゼ阻害薬
  • CAR T細胞療法

 

2016年3月現在では、唯一ポナチニブだけが国内承認に向けた現実的な選択肢なのが残念ですが、これからどんどん研究開発や治験が進むことで、これらが早期に実用化されることを心から願っています。

ではでは

2016年11月29日全面的にリライトしました

用意していたリンク先がことごとくエラーになってしまっていたので、外部サイトへのリンクは全て外しました。本文も全てオリジナルのものに修正して、書き直しています。本文中にでてくる治療や薬について、ご自分でもう少し詳しく調べてみたい方などいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わフォームよりご連絡ください。

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2 件のコメント

  • 夫54歳PH急性リンパ性白血病を発症して間もなく3年目になります。ひょんなことからあなたのページにたどりつきました。夫は抗がん剤治療の2回目で副作用により重症となり、白血病の再発はないものの気管切開、人工呼吸器、全身の機能が不自由になってしまいました。療養型の病院に転院して半年が経つかな・・・今まで怖くて最初の頃は怖くて同じ病気の方のブログ等読めませんでした。
    今はいろいろ調べ、自分なりに情報を得ていますが、我が家と同じような再発ないものの重度の障害になるケースがレアなものでして、情報がありません。どうしたものか・・・どこに向かっているのかわからなくなるんですよ!
    普段は仕事があるので元気で楽しく過ごしていますが、夜はどよよ~~んとしています。
    これからも読ませていただきます。

    • マエカワははさん、初めましてこんにちは^^
      返信遅くなりましたが、メッセージ拝見しました。ありがとうございます!

      病気そのものではなく、治療過程での副作用や突発の異変だったんですね。
      ご主人を支えていらっしゃる現状、心身ともに大変な状況とお察し致します。

      病気に関するブログも読めず・・・、という気持ちは良くわかります、すごく怖いですもんね。
      自分も最初のうちはずっとふさぎこんでいました。

      日々のことに疲れてしまったり、不安になることも多いでしょう。
      そんな時に愚痴こぼす相手がいればいいですが、なかなか難しいですよね。
      僕のブログで何か解決できるとは思ってもいませんが、お話を聞くことはいつでもできます^^

      今の時間も大切な人生の一部です。
      マエカワははさんとその周りの方が、笑顔で暮らせる日が来ることを心から願っています。

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