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ひろまさ(@hiromasa79)です。
臍帯血移植後も、経過は順調です。造血機能や、GVHDのコントロールも上手く行っているため、いよいよ退院という言葉もちらほら聞こえ始めました。
そこで、知り合いに今の病状を報告をしようとしたときに、「寛解」っていう言葉が意外と上手く説明できないんですよね。
「退院できるってことは治ったん?」
「いや、治ってないけど今のところ日常生活に支障ないレベルって感じ。」
「じゃあ、また入院するん?」
「するかも知れんし、もうせんでもいいかも知れん。」
「どっちやねん(笑)!?」
こんなやりとりを何度か経験しました。
一見とっつきにくい言葉のように思いますが、友人や身内の方がガンだった場合など、「寛解」という言葉を理解しておくと話しやすくなると思いますので、是非今日覚えてください。
ざっくり記事を読むための見出し
「完治おめでとう」は心苦しい
完治とは・・・読んで字のごとく完全に治るという意味です。「骨折して完治した」なんていう場合は、解りやすい例ですね。
寛解とは・・・病気の元となる要因は完全に排除出来てはいないが、病気の症状がない(=治ったのと同等な)状態のことを言います。病気の根本は体内に残っているので、いつかまた病状が悪化、再発する可能性がある状態と言えます。
ですから、ガンや白血病などの患者さんに対して、退院できたからといって安易に「完治おめでとう」という言葉をかけるべきではないというのが僕の持論です。逆に、「寛解したんだね」と声をかけてもらえると、「この人はわざわざ調べてくれたのかな、気にかけてくれてたんだなぁ」というのがとても伝わり嬉しくなるものです。
Ph陽性急性リンパ性白血病の治療では、まず抗がん剤と分子標的薬の併用で寛解状態に導きます。そして、寛解状態になったとしても、造血幹細胞移植を行うことが1番生存率が高くなる(=寛解状態を1番長く維持できる)というデータがあります。移植に関しては、タイミング、体調、年齢など考慮すべき点が多々あるので一概に全患者に当てはまる訳ではないのですが。
寛解のLV.について
急性リンパ性白血病とは・・・「幼弱なリンパ球(芽球)が無制限に増殖することで正常な造血が出来なくなる病気」です。診断の基準は、「骨髄内の芽球比率が20%以上認められ、そのうち、ペルオキシダーゼ染色法で陽性となる芽球が3%未満の場合」とあります。
と難しい説明は置いておくとして、病気なのかなぁという自覚症状があって自ら診察を受けに行く位なので、病名の診断をうけるときには、たいてい骨髄内は白血病細胞で占領されてしまっています。そして、骨髄から血液中に漏れ出した白血球数が、異常に高い状態になっているはずです。なので、定義や数値はあまり気にする必要はありません。
因みに、僕が診断を受けたときの血液検査数値は、白血球28,000、血小板8,000、芽球比率(BLAST)94%でした。この悪い状態の血液から、治療によって寛解状態の血液を目指していく訳です。
LV.1 血液学的完全寛解(CHR=complete hematologic response)
上記の3つの条件を満たすと、「血液学的寛解」と言います。先ずは、この血液学的寛解を目指して治療をしていきます。Ph陽性急性リンパ性白血病の場合、抗がん剤+スプリセル(分子標的薬)の併用治療によって、およそ80%程度の方が血液学的寛解状態を達成できるというデータがあります。
僕の場合は、治療開始から約30日前後で血液学的寛解を達成していたようです。(当時の記憶がなく、前後の期間の資料数値から推測。)
LV.2 細胞遺伝学的完全寛解(CCyR=complete cytogenetic response)
骨髄内のフィラデルフィア(Ph)染色体陽性細胞が0%の状態を言います。
※末梢血を使った好中球FISH法で検査することが多く、主に慢性骨髄性白血病(CML)の評価で使われています。(僕自身はやったことがないので詳細は割愛させてもらいます。)
僕の場合は、骨髄穿刺をした日の夜に、サイトフローメトリーという検査で主治医が顕微鏡で確認した結果を教えてもらってます。その検査でフィラデルフィア染色体陽性細胞がなかった場合が、細胞学的寛解に当たるのかどうかは不明です。
LV.3 分子遺伝学的完全寛解(CMR=complete molecular response)
PCR法による検査で2回連続BCR-ABL遺伝子が検出されない状態を言います。
※PCR法(Polymerase Chain Reaction)…今ある検査法の中で一番精密な検査で、0.001%の微小残存病変(MRD)まで検出可能となります。例えると、学校にある25mプールに満杯の水をはって、スポイト1滴分のインクを落としてもそれを検出することが出来るくらいの精度です。
つまり、「分子遺伝学的寛解」になったということは、「これ以上ない良い状態になりましたよ」というお墨付きが出たということです。ただ、一方で、「白血病細胞は必ず体内に残っている」と先生は口を揃えて言います。どんなに数が少なくなって、最新の検査でも見つからないような量になった!としてもです・・・。
ですから、PCR検査でCMRになったからといって、決して治療を止めていい訳ではありません。これから先、何年、何十年と生きていく上で、再び白血病細胞が表舞台に出てこないように、注意深く監視して暮らしていく必要があるのです。
さいごに
Ph陽性急性リンパ性白血病になり、身をもって体験した白血病が「再発」すること、の恐さをお話ししたいと思います。
1度目の再発は、PCR検査でCMR(一番いい状態の寛解)を確認したそのわずか10日後のことでした。検査では全く見つからなかった白血病細胞が、10日後には血液中の60%を占拠するまでに増殖してしまうというそのスピードには唖然とするばかりでした。急性白血病の病状進行の速さを身を以て知った瞬間でした。
2度目は、姉からのハプロ移植(造血幹細胞移植)から47日後のことでした。血液中に芽球が数%確認できる、いわゆる「非寛解」状態での移植だったので、嫌な予感はあったのですが、それでもこんなにも早く白血病細胞は増殖するのか!と改めて驚かされました。さすがにこの時ばかりは、3度目の治療に向けた元気はなく、どうしようもない鬱な気持ちを抱えて泣いていたのを覚えています。
ですがそこからなんとか気持ちを切り替え、2015年12月25日に2度目の移植(臍帯血移植)を受けまして、今では108日が経過しており、CMRをなんとか維持することができています。
一般的ながん治療による寛解後の経過観察では、「5年が一区切り」とよく言われています。「5年生存率」と言われるのもこのためです。これは、治療による寛解達成後5年経つと、有意に死亡率や再発率が低下するというデータがあるからです。
365×5=1,825日。まずはここまで生き抜こうと思います。
では
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